富山市近代美術館

富山県立大学に伺いキャリア教育の調査を終え富山市に。25年ぶりになり、トラムが走る観光都市の風情には以前の瓦葺きの民家が多い空が大きな町、という記憶が重ならない。巨大な紀伊国屋書店もうらやましい。

しかし美術館を巡回する無料送迎バスのドライバーさんによると、百貨店は減りアーケード街は閑古鳥、中国からの観光の方だけが増えているらしい。近代美術館の常設展だけ見る。同館のポスタートリエンナーレは有名であり、スイスポスター展と20世紀美術展が常設コレクションになっているところに感銘をうける。
B1サイズのスイスポスターの展示空間に身を置くとわくわくする気持ちが生まれる。構成、色彩、タイポグラフィといった静的な刺激は、絵画世界から受け継いだ美のルールと、近代の市民社会にむけた文化啓蒙のメッセージが混じり合った、ポスターならではの作品価値があると、いまさら考えた。
しかし美術作品同様に、実物のサイズ、インクの盛り、印刷の網点のマチエールを見ない事にはこれらは分からない。年鑑のような小さな複製ではポスターから受け取れる喜びはほとんど全て失われているのではないか。B1サイズの優れたポスターは、芸術性が高い情報発信のための贅沢な存在として、文化を許容できる大都市において機能していくようになるのだろうか。商業的な情報発信はデジタルサイネージやモバイル環境が受け持つほうが相性がいい。
でも、一番じぃっと見とれたのはデュシャンの「カタログの箱」だった。

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