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熊本市

熊本は夜も待ち遠しい。アーケード街は9時を過ぎても人通りで賑やか。夏なら11時過ぎまでそのままだ。お店も壁や窓が少なく、通りに面してオープンな作りが増えた。植栽は威勢が良すぎてお店が埋まるほどに生い茂るものもある。

こうした街の様子にアジアの都市の共通性を感じる。暮らしの中で、人工物よりも自然の風や日差しの存在が強いようだ。
「下通り」の端の間際を東に曲がる通りに叔母が経営する旅館があったのは15年ほど前までだろうか。旅館街は次第に夜の歓楽街に姿を変えていき、今や一件も残っていない。
黒い板塀、玉砂利の路地、赤くて妖しい提灯、女中さん、貸本屋。昭和に存在した街の、触感や匂いの記憶は強い。まして子どもが初めて体験するものごとは、成人とは違う強さで心に刻まれるのだろう。
「鶴屋」デパートの前のバス乗り場は、分刻みで次々と現れるバスが停車するのが一カ所だけというバス停だ。乗客は電光掲示板で自分の乗りたいバスが近づく表示を見て、目の前に止まるバスにただ乗るだけ。人はバス停を探す必要はない。乗りたいバスは必ず、いつか目の前に来る。その時間を探すだけなのだ。

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copyright Nobuo Yasutake