突破する力

ゼミの学生がオリジナルフォントをデザインした。発案からモチーフの選択、エレメントの設計、ファミリーの構造など、良い意味で時間をかけて検証してきただけの精度がある。何度か助言はしたものの全ては彼の仕事であり、それが嬉しい。情報設計の段階で正しくても、エモーショナルな突破力は他に代え難い説得力になる。また、こうして誰に頼まれた訳でもない仕事をしっかりやり遂げたことが、学生本人にとって転機になるだろう。
作りづけるエネルギーは自分との闘いのようなもので、解決すべき問題からエネルギーを受けてつつ返す力でやりとげるようなデザインとは異なるものだから。中学生の頃からノートの切れ端に描いていた絵がデザインの道を選んだきっかけの1つだとしたら、そこにはクライアントはいなかったのだ。

copyright Nobuo Yasutake