マラッカ



旅は表を作ることから始める。縦軸が日にち、横に行程。空っぽの表を横において、ホテルの空きを見比べて、少しずつ現実性を確かめていく。
街の成り立ちを考えながらホテルの立地を想像するのは楽しい。移動しやすいか、生活雑貨を売るお店が近くにありそうか。繁華街から離れれば広い部屋とプールがありそうだし、街中なら疲れたら戻って休めそう。バリみたいにオートバイを借りたりすると条件は変わってくる、みたいに矛盾した優先順位のもやもやが、これまでに行ったことがある街と比べつつ考えているとやがて勘が効いてくる。ホテルそのものの決め手は文化性や歴史性にしてみたい。仕事じゃないし。
ネットから部屋の空きを睨みながら予約できそうな可能性が組めてきたら、飛行機の候補を出してみる。でもBooking.comだと、このお部屋はただいま3人が検討してます、みたいに表示されて焦る。オマーンの○○氏が20分前に予約しました、なんてね。はらはら。
マレーシア、だからエアアジアを使ってみたい。LCCA、格安航空便の代名詞みたいな存在だから我慢が多いと嫌だな、と少し思いながら。
こうして休み休み、一週間程ぼんやり進めながら行程を決めた。
旅の構造を作る要素はやはり複雑だ。僕にとっては、予測できる範囲の快適さとその場で対応する冒険度合いのバランスが7:3位くらいかな、と思う。年とともにリスクを避ける傾向があるのは良くないけれど。一人ならどこで何しようといいんだけどね。健康体で帰ってこなきゃいけない。

プラナカンというのは裕福な中国系の移民の子孫とされるが、その生活様式が建築や料理として現代に残っているのがマレーシア、特にマラッカとペナンだという。女性の地位が高いのも印象的で、ニョニャという女性たちが受け継いだ文化が保たれている。かわいい、お菓子みたいな建物もお菓子もフォトジェニックだな。

羽田空港の近くにN-ONEを一週間停めっぱなしで行く。軽自動車だけど130kmくらいでもしっかり走ってくれる。あれ、新車だから慣らしは?、というよりも速度違反。
エアアジアはターミナルの端っこ。場末感があるが仕方ない。一人往復50,000円だ。九州に帰省するのとほぼ同じ。追加したオプションは足元が広いホットシートと毛布、スーツケース運搬料ww。23:45発で06:15着だけど、いつ、どうやって毛布を届けてくれるのかと思ってた。水平飛行に入って随分経ってから、リストを片手に真っ赤なスーツの乗務員さんがやってきた。事前に頼んだもの以外はノードリンク、ノーフード、機内サービスはありません。おやすみなさい。
クアラルンプール空港からはマラッカまでタクシーを使う。219RM、6,800円、1,5時間。安くないけど、バスを探して乗り継ぐストレスは避けた。そもそもLCCTのターミナルは正規の空港ビルの反対側で公共交通機関の利便は敢えて使いにくくしてあるように思える。これに比べれば一昨年苦労したフランクフルト空港なんてかわいいもの。
タクシーは高速道路を目一杯走る。マレーシア産の車は足回りが弱そうだ。左右はずーとヤシ畑?が埋め尽くしている。時々アウディBMWメルセデスの御三家のセダンが走行車線側から追い抜いて行くが、マナーはとてもいい。フランス車はほとんど見ない。トヨタ・カムリ、ホンダのアコードがぴかぴか立派で誇らしそう。ブランドだ。

Hotel Puriはマラッカ市街のちょうど中心部だ。18世紀のプラナカンの豪邸を改装して、どのサイトでも評価が高い。その理由はすぐ分かった。9時に着いたのにてきぱきとお部屋を用意してくれる、朝ご飯も案内してくれて、ホスピタリティが現代的で国際的なのだ。ジュニアスイートの部屋も鉄と木をあしらったメゾネットになっている。モダンで清潔。Wihiも使える。
マラッカの街に歩き出した。

copyright Nobuo Yasutake