モノをつくる、その前に

ゼミの4年生のグループ制作をアドバイスしに行く。夏休み中なのにしっかりプロトタイプ制作も進めていて感心、感心。4年ともなると安定感がある。難点があるとしたら、やはり「すぐモノをデザインしちゃう」癖でしょう。
ユーザーが使用している姿を想像すると、今デザインしているモノの過不足がすぐ見えてくるのに、作っちゃう。相手を想像する前に自分が作りたいものを。プロのクリエイターを目指すなら、創造と同時に、想像ができるように。
タイのランシット大学で、デザイン研究の院生とのワークショップで感心したのは、美術の経験がある学生よりも数学や建築を学んだ学生の方がイマジネイティブだったこと。特に優れた詩情を感じさせたのは、法律の学士をとっている男子学生だった。論理的な冷めた判断力が、デザイン思考には必要だと私は思う。
尊敬する中西元男先生とお話させていただく機会があった時に、デザイナーをうまく使う人材も育てないと、と危機感を伺った。(それが早稲田大学の戦略デザイン研究会や桑沢デザイン研究所の講座に結実されている)どんなデザインも、最後は経済活動を推進する所に向かう宿命を持っている。美術とデザインの教育には共通項も多いが、明快な違いを自覚することが必要だ。

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