デザイン学会

人間中心デザインへの注目度がいよいよ顕著になってきた、と千葉工大で開催された日本デザイン学会春期大会で確信した。個人的にはデザインの現場を経ながらずっと感じ続けていた居心地の悪さのようなものが年々氷塊し、腑に落ちてくる感触がある。

プラスチックモデルメーカーの宣伝部に在席していた時から、そのプロモーション活動が「ファンを育てる」というユーザーサービスに収斂されていることに共鳴していた。ユーザーは購入したパッケージから製品を楽しむ方法を知り、必要な資材を追加購入する。組立て、取扱説明書からは製品のコンセプトと実物の歴史的背景を知る。微細な部品の購入は専門のサービス部署が対応する。製品を使うイベントを開催し、製品を楽しむファンが発言し、誇りを持てる情報誌を発行する。一連の活動は当時の「グラフィック」や「マーケティング」という枠を超えた、ユーザーサービスを実現する情報デザインに他ならなかった。中小企業でも先進的な視点が奇跡的に実現していたからこそ、同社は世界中に熱烈なファンを抱えるに至ったと言えるだろう。
デザインは謙虚な活動であり、企業活動における自己顕示や競争の舞台から離れて、使う人の誇りを守り、育てるような役割であることが広く伝わっていけるようにしたい。

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