しまなみ海道

いくつもの入り江にさざ波が寄せ、木々の影が揺れている。海と島と空でできた光景は、慎重に構図が考えられた絵のように、美しい。外界から護られた、祝福された土地のようだ。台風12号の接近をブロックしているという強い高気圧の気配がわかる、夏のまっすぐな光線が景色にさらに魅力を加えている。来て良かった。あの道は良いよ、と勧めていただいた浅野先生、ありがとうございます。GS乗りの大先輩。
しまなみ海道を走る我々に、瀬戸内海は次々に魅力を見せてくれた。季節と天気と体調と、いろんな条件が整ってこうした時間が生まれる。オートバイに乗るのは、リスクを想定して、なお立ち向かう冒険心が不可欠だろう。気持ちが緊張している分だけ、感受性も鋭敏になる。
仕事上のリスクは平気な方なのに、プライベートだと歳とともに安全第一になってきた。石橋叩いている内にタイミングを逃しがち。生きる力も落ちてきているのではないか。オートバイに乗る行為を望んでいるかどうかは、気持ちの強さを測る象徴かも。
というような遊ぶ言い訳を考えるのは昔から上手い。
6時に出て東名、東名阪、新名神山陽道を西福島まで。今治シビックプライドセンターを訪問後、今治小松道、松山自動車道を経て八幡浜市へ。伊予市で夕暮れを迎える。薄暮の中に知らない土地を走る心地いい孤独感を満喫したのは、何年ぶりだろう。

copyright Nobuo Yasutake