やまなみハイウェイ

フェリーで対岸の臼杵に着くと正午だ。真夏の日差しがある。この日は37度だった。グローブは夏用だけど中で手の甲が汗をかいているのが分かる。57号線を西に向かい、竹田から北上して九重のやまなみハイウェイに。実は熊本育ちなのにこれまで走ったことがない。ミッドタウンに行かない青山住まいとか、寿司を食べたことがない日本人と同じか(汗)オートバイ乗りの聖地の一つなのに。
ぐいぐいと標高を上げるにつれて、緑が濃くなっていく印象がある。山々の稜線は険しい。九州という南北300km、東西200kmの大地の真ん中に近い、広い高原の中にいる実感がある。空が近く、見渡す限り大地が続く。行き止まりに感じてしまう海までは遠く、走りがいのある道が前後左右に伸びている幸福感は、九州ならではだ。男性的な光景だと思う。
阿蘇の外輪山を降りて、根子岳を回りこんで高森町、南阿蘇のカフェ通り(勝手に命名)を経て熊本市内に入ると、土砂降りになった。市電の線路は石畳みでよく滑る。夏の最期を実感できるフルコースだ。
昔、片岡義男さんが書いた「オートバイに乗るのは日本の地理の勉強だから」というくだりは、今も共感できる。

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