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未来デザイン合宿 in 下田

2年続いた伊東市を離れて下田市で合宿ワークショップを行った。
新しい観光キーワードを抽出する目的で、ビーチと市街地を対象にしたフィールドワークからラピッドエスノグラフィーを学ぶ内容だ。2年7名、3年14名、4年9名、計30名の学生が7班で行動し、初日はフィールドワーク、2日目にカードソートを行う。「ユーザーの潜在的ニーズ」「観光の潜在的魅力」をそれぞれ抽出していき、双方の関係性から未開拓の観光要素を分析する。
14時に下田駅前からバスで5つの浜に出発。私は最も規模が大きな白浜大浜行きのチームに同行する。15分程度のバスなのに320円!家族で行けば1,000円近い。観光地ならば夏期は安いチケットを販売してはどうなのか?こういう細かなサービスをアップデートできない(する体力がない)観光地は時代から遅れつつあるのでは、と予感する。
白浜でバスを降りた我々に声をかけてきたのは、ビーチパラソルレンタルの大学生アルバイト、1,000円。幅800mの広大な浜一面にパラソルが並ぶ姿は圧巻だが、冷静に観察すると、海、白い砂、企業ロゴ入りのビニールパラソルかテントの日陰、だけで構成されているのがここの特徴だ。冷えたカクテルを運んでくれるギャルソンや、ガイドブックで評判になるようなデザートを出すような気の利いたカフェはもちろん、「海の家」もない。その原因は地理的な構造にあって、国道が海辺とコンビニやショップを分断し、利用者は混雑した舗道を歩き横断歩道を渡って浜へ降り、帰ってくる。ユーザーの行動は物理的に分断されているのだ。これは日頃のストレスを癒す海のリゾート、ではなく人と車の渋滞からストレスをもらう海水浴場である。
しかしそう思う人は来ない、というのも真実であり、こうした混乱を当然のこととして受け止めて、跳ねかえす気力体力のある人々が集うのが白浜だとも言える。現状のユーザーの生活感や価値観を無視しすぎた提案はごり押しになる。彼らの心にある「でもちょっと、こんなことがあれば」という小さな望みを観察できるかどうか?が学生に課せられた課題だ。例えばパラソルを借りた人、貸しているアルバイト学生、テントを持ち込んだグループ、クーラーボックスの中身、飲んだり食べたりしているモノ、国道沿いの売店にある「富士宮焼きそば500円」(これかかき氷しか選択肢がない)の注文率、温水シャワー500円の利用者の顔ぶれ、駐車場の車の都道府県、家族構成、年齢層、etc..観察項目は増えるばかりだが、難しいのは観察者側にも居場所がないという白浜のロケーションだろう。学生が「先生、私たちと一緒に居た方がいいよ」と言ってくれる。「一人だと不審者にしか見えない」そうである。確かに。
分かれて16時のバスで市街地に戻り探索する。日曜夕方とはいえ観光客が散策したくなる要素は少なく、ペリーロード周辺に限られる。キャンドルナイトを含めて観察して20時過ぎにI旅館に入る。
鍵が無い、ドアが開かない、虫がいる、浴衣が無い、タオルがない、トイレが古い、部屋のお風呂が、と不安が噴出するが、ミーティング中に「普通は開かないだろう」というドアが開いておばさんが顔を出し、「遅れたお客様が玄関にお着きになりました」(全員居た)という案内で、何やらホラー旅館との笑いに落ち着く。文化の大切さを説く女将さんに学生が「むしろ彼女にサービスの文化を教えてあげたい」と言った(汗)
22時過ぎからは夜話会。デザインの話、HCDのこと、ワークショップや部活の運営、インターンシップ、就職などの話が切れ切れにあったり、ジェンガが続いたり。大学は生き方を学ぶ場所であって、技能を覚える場ではないことを未来軒の彼女たちは知っている。25時頃に就寝。
9時からワークショップ再開。学生はカードにニーズと魅力を書き出していく。しばらくするとグループごとに課題が生じるが、主に3つに大別される。(1)記載の方法に悩む:抽象的な単語で書き出すため、具体的な状況描写がなくなり、グループ間で想像力が共有されず議論が活発化しない。(2)語彙に悩む:ニーズに該当するコトバ、魅力に該当するコトバに着地しないため、議論が本質に到達しない。(3)喋らない人が多い:分からないから喋らない、という日本人ならではの妙なプライドがあるグループは次第にどんよりしてくる。グループワークは水ものではあるが、鍵を握るのはやはり、構成員が成功意欲を持っているかどうかだろう。授業と違い、自分から予習復習をしない人は(社会と同じように)厳しいのだ。課題や解決方法は事前に提示してあったのに、予習しなかった部員も少なからず居るのはけしからん。甘えていないで自分で本を買って読みなさいw グループに順に指摘して回り、自主的に議論が活発化するようにしむける。後から聞いたが、海岸でカードソートしていた勇猛な班も居た。必要だと思うことを勇気を持って行うのは素晴らしい。私も見習らわねば。
16時から発表。中でも観察に丁寧に取り組んだA、B、F、Gチームが論理性と意外性を兼ね備えた結論に辿り着いたようだ。出発前から指摘していたように、ビーチについて最初の10分で観察の分野と役割が適確化できたかどうかが成否を分けており、一目瞭然でカードの枚数に比例している。つまり多様で具体的な情報を揃えたチームが強い。反対に観察対象が重複したり、細部に疑問を持たないまま固定観念でメモをしていたチームが苦戦したのではないか。同行した白浜は2つのチームが分析していたが、私の観察と比較して良かった点は利用者に取材をした点だ。逆にビーチの構成要素の観察は規模が小さく、複数人で手分けしていれば背後の飲食要素や物販要素の情報も集められたはずなのに、と思う。ビーチの規模が大きく学生は気後れしたと言っていた。
発表には下田市の地元活性化の活動をしておられる商工会議所関連の青年2名が同席された。こうしたユーザー利用から価値提案に繋げる視点はプロにはできない。先入観がなく、既得権益に無関係な学生だからこそできることだ、と感銘を受けておられた。学生は私に見せない場面でさまざまな葛藤や不満があったことだろうが、よく自制してくれている。有り難いし、頼もしい。例年と比較して、デザイン開発を学ぶにおいて「嘘がない」思考と行動を学んだとしたら最大の収穫だ。

白浜海岸でフィールドワーク開始

合宿部長+アトラクション隊長の活躍。にしても昭和すぎ。

カードソートはUX_Shizuoka参加学生の活躍が頼もしい

Aチームはインタビューのボリュームと発案の強さが特徴

Bチームはカードソートの論理性が上手い。丁寧で嘘がない

Eチームは経験者不足にも関わらず迷走を抜けて達成した

Fチームは観察視点がユニークだが、模範的なプロセスをものにした

Gチーム(海岸カードソート!)膨大な情報を凝縮していくセンスがある

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copyright Nobuo Yasutake