Service Design Hong Kongに参加した
昨年度参加された山岸さんのブログがずっと気になっていて、近場で気軽という感覚で申し込んだ。
http://thought.hitoyam.com/entry/servicedesignhongkong2017overview
おかげで、楽しい気持ちが今も残っている。それはプログラムの内容からというよりも、そこにいた人たちに触れて、自分の関心や居場所はあちこちにあることを実感できたことが大きい。アウェイなのにホームみたいな手応えだ。
さて、本来はダブリンの世界大会に行こうとしたが、スケジュールの都合と、通常チケットが10万円超えていたため、断念した。SDHKはSuper EarlyBird割引で3万円。
https://www.servicedesign.com.hk
当初ははっきりした目標もなく、スマートシティというテーマもしっくりこないまま、手配を始めた。
事前に、嬉しいことが少しづつ増えた。フライトは48時間前から座席指定が無料になるが、きっかりの時間にアラートメールが届いた。オンラインチェックインも簡便で、1時間前にパスポートの提示だけで手続きが終わる。夏のフィンランド行きと同じく、2時間以上前から空港カウンターで並ぶという無駄はなくなった。
復路だと、香港市内の鉄道駅でチェックインできるため、荷物を駅で預けて街中で過ごすこともできる。
また、主催団体からはアクセスやプログラム、食事のチョイスが、ちょうどいいタイミングで届く。このまま現地でいきなりワークか?と不安になりはじめる、まさにその日に、待たせたね、とメールが来るので、そのコミュニケーションセンスに信頼が持てはじめる。
プログラムは、1日目が国際海洋博物館のホールで終日、トークセッション。2日目は香港島の南側に移り、3つのテーマから選ぶワークショップ。
SDHKでは次が腑に落ちた。なぁんだ、と視界の霧が晴れた感じ。ということは、最近の自分の問いがここにあったということか。
①サービスデザイン=ビジネスを人間中心に設計すること。
②スマートシティ=デジタルとリアルの体験を途切れることなく繋がっていること。
③多くの人が、個人で、境目なく動いている。
①は、個人的に、武山先生の著書「サービスデザインの教科書」を手掛かりにしてきた。しかし、HCD、UX、マーケティング、CVCA、ステークホルダーの成功モデルなど、領域ごとの概念が重複するため、学部教育や企業コンサルタントに活用すると、リーンに動きづらかった。
SDHKでは実践例から学べることが多い。
香港デザインセンターを活用して地域にクリエイティブ産業を興している行政の事例。
台湾の行政から委託されたサービスデザイナーが、若者の意見をデジタル技術でサポートすることで民主主義をアップデートする試み。
タイの小・中学生が個人でビジネスを立ち上げることで大きく成長を遂げている話。
どんな場面でも、クリエイティブと、ビジネスマネジメントと、エンジニアリング、市民という役割の人々が同じテーブルに座り、協力しあうことで、数年で解決し始めている。
人に我慢をさせてきた不具合なしくみに対して、テクノロジーでうまく埋められることに気がついた人たちが、どんどん実践している。
それらは、既存のデザインのカテゴリーで捉えることには無理があるため、ひとまずサービスデザインと呼んでもいいではないか。要は、ステキな生き方(メタな哲学からミクロな利便性まで)の理想(ビジョン)を思い、テクノロジーで実践することが、現代のデザインだ。
②は、単純に「スマート=知性に裏付けられた快適さ」の良さを、疑う必要はないなぁと思う。
現にSDHKは、利用者と主催者の双方にとって、申し込みから振り返りの全部の時間で、移動や飲食の不安がなくなり、コミュニケーションの喜びが増えたほうがいいことが明らかだ。そのためのしくみはスマートにしたい。
チムサッチョイ駅で、交通カードに不具合があった。オンラインで日本から割引購入したものだ。私たちの操作ミスだが、若い係員はデジタルと改札機の双方に通じていて、気持ちよく処理してくれたことは、その象徴のように感じる。
セッションでの議論は「Relationship」を生み出すことが条件だ、と展開し、うまく言い得ている。私も発表者も、考えたいテーマは同じだった。
スマートシティの代表と評価されるシンガポールは、幸福度ランキングでは100位以下という事実らしい。ムンバイの暮らしと比較しつつ、真の価値は、他者との関わりをどうデザインするか?という視点が提示された。
これは、都市だけではなく、製品や教育の開発とも同じだろう。
ふつう、タッチポイントは「~できる」という動詞で表される「機能」の設計から、「美しい」とか「静かな」などの形容詞(形容動詞)で表される「感情や情緒」の統一感にあるな、と思う。自分と、自分以外の社会との「関わり方」をどのようなトーン&マナーにすればいいか?ということだろう。考えてみたい。
③主催したMAKE STUDIO Asiaの人たちの姿勢に励まされた。一人ひとりが変わることから未来の設計が始まる、と信じて、目の前の人に関わる、あかるい力を感じる。
サービスデザイナーは、グラフィックファシリテーションも、記録や映像編集も、受付やケータリングの手配も、ワークショップデザインも、全部やってしまう。そんな境目がない仕事のスタイルだ。
振り返れば自分も同じで、ステキなことをやろうとすると、専門分野には意味がなく、できることは全部やっていくのがあたり前だった。(大学にいると、そこは僕の専門じゃないから、という大人をよく見る…)
ビジネスカードにも、サービスデザインリーダー、イノベーションディレクターという、信頼したくなるフレーズが並ぶ。今必要なことをどんどん進めている人が、こんなにたくさんいる、という実感が持てたことが、SDHKの大きな成果だった。
④英語は得意じゃないのに出かけたのは、日本での仕事の現状を、つい言い訳にしないようにしていそうと思ったから。突っ込んだやりとりはできないけれど、この2日間は、少なくとも、自分の身体をそこに置かなければわからないことばかり。
自分をどんどん作り直すには、ソトにいるのがいいと思う。